アルゴリズム建築コース1日目

 

 

 

前田紀貞建築塾【アルゴリズム建築コース】開講!

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はじめまして^^

前田紀貞建築塾【アルゴリズム建築コース】の講師兼TAの殿村勇貴と申します。今期で10周年を迎える前田紀貞建築塾では、近年増々注目を浴びているアルゴリズム建築の創造を目指す「アルゴリズム建築コース」を開講いたしました。このブログでは、現在進行中のこのコースの毎回の授業の様子を私・殿村がつぶさにレポートしていきます。

 

さて、今期より新生なったこのコースの最大の特徴は、コンピューター・アルゴリズムを用いた建築について、プログラミング技法のみならずその基底に流れる(べき)思考や具体的な建築創造の方法論まで総合的にカバーしていることです。 具体的な授業の内容は、次のような4つの要素から構成されています。

 

①    アルゴリズムを扱う基本思想の会得


②    コンピューター言語(Processing)の習得

③    Grasshopper(3D CAD Rhinocerosのアルゴリズミック・エディタ・プラグイン)の習得

④    それらを実際の設計課題で創造的に扱うことの訓練

 

通常は6ヶ月間のコースですが、今回の第十期生は事務的な経緯もあってこれらを4ヶ月で習得することとなります。その分、通常よりも講義時間を長く時間を取ることで、何とか最後の「設計課題」にまで漕ぎ着けます。 

 

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それでは早速、一日目の授業内容を紹介していきます^^ 

 

アルゴリズム建築講義】13:3014:30

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第一回目から何回かの間は、

=授業前半が塾長・前田による「アルゴリズム建築講義」

=後半が講師の辻真悟・殿村勇貴による「プログラミング演習」

の二本立てで進められます。授業初回のこの日は、アルゴリズミックな方法によって建築を扱う時の大前提となる「心構え」の説明が、この講義の講師である塾長(前田紀貞)より成されました。以下がその主なポイントです。

 

1.    アルゴリズムというものが「自律と他律」のバランスの「他律」に関わることの認識(しかし、自律も忘れられてはならない)

2.    アルゴリズミック・デザインの6種類の分類について。当塾では、現在その中で最も普及していない「アルゴリズムと“創作”との関わり」について学ぶこと

3.  「コンピューターの中に自然がある」という言葉の意味。さまざまな自然現象や自然の形態に見出される驚くべき秩序の裏にある「摂理」にコンピュータ・アルゴリズムを媒介として接近することの意味

 

私たちが常日頃考え、希望しているのは、アルゴリズミック・デザイン手法・思考法が、単に新奇な形態デザインや設計作業の効率化の道具であるだけに終始していてはいけない、ということです。実際、今日アルゴリズミック・デザインと呼ばれているものの大半はそういうアプローチによるものが多いのが事実であり、中には「これをするのにわざわざアルゴリズムを使うの?」というケースも少なくありません。そういう態度が、本来アルゴリズミック・デザインという手法が建築設計という営みに対して持つ底なしの可能性の根を潰し、数ある「設計技法」の中の単なる一つのカテゴリー(「便利」かもしれないが「必須」ではないもの)だという誤解を生んでしまっているのです。

 

前田紀貞建築塾では、そのように限定的で曲解されたアルゴリズミック・デザインを越えて、アルゴリズムというものが実は、いにしえからあった「自然」や「東洋の思想」と根を同じくするものであるという思想を大前提に置き、大切にしています。技術の習得・使用を真の意味で「血肉化」と呼べるレベルにまで昇華させるのに必要な、そういう骨太な「思想」や「意識」があってこそ、単なる技術論を超えて来るべき真の「現代建築」へと繋がるパラダイム・シフトを招来することができると考えるのです。第一日目となるこの日の<講義編>は、前田アトリエの作品による実例を紹介しながらそのような話を説く前田塾長の講義で幕を開けました。

 

塾生の反応を見ていると、何となくピンときている人、うむむ…と頭を捻っている人、まだ良く分からないけど何か新しいものを感じて目を輝かせている人など色々ですが、これから自分の手と頭で「アルゴリズム建築」との格闘を実践していくなかで、塾長の話の意味も「あの時の話は、こういうことだったのか…」と徐々に染みこんでくるはずです。

 

【プログラミング演習】14:3016:30

さて、休憩を挟んでの授業後半は、実際に手を動かしてプログラミング技術を習得する<プログラミング演習編>です。

この演習編の講師は、知る人ぞ知る荒川修作+マドリン・ギンズの三鷹天命反転住宅にてCHIASMA FACTORY一級建築氏事務所を主宰する辻真悟と、前田アトリエのスタッフ・殿村勇貴の二人が務めます。ちなみに、辻講師は前田紀貞建築塾の3期生でもあり、現在は台湾で建設中のENISHI RESORT VILLAを始めとするプロジェクトで前田紀貞アトリエとの共同作業を行っている建築家です。

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プログラミングに使うのは「Processing」という言語(ソフトウェア)です。Processingについての詳しい説明はここでは省きますが、現在の主流言語の一つであるJavaをベースに、主にビジュアルデザインやエレクトリック・アートでの使用を想定して作られたオープンソース言語です…と言っても分かりにくいと思うので (^_^;)よりザックリと言うと、プログラミングに馴染みが薄いデザイナーやメディア・アーティストでも簡単に使えるようにカスタマイズされたコンピューター言語の一つです。

このPorcessing、日本の建築界ではまだやっと名前を知られてきた程度なのですが、発祥の地アメリカをはじめ、世界中では既にメジャーな言語/ソフトウェアなんです。Processingの詳細はこちら→http://www.processing.org

 

10期の受講生4名(その後1名が加わり、5名になっています)は、建築学科の学生からスーパーゼネコンに務める社会人、さらには今は建築設計を専門にしていないけれど将来的に設計の道に進みたいという志を持つ塾生まで、立場も年齢もバリエーションも受講同期もバラバラな、バラエティ豊かな面々です(少し脱線になりますが、こういうふうに他の場所ではなかなか出会わないような面々が膝を突き合わせて一緒に学ぶというのも前田紀貞建築塾の面白さの一つなんです)。そんな中、皆に共通しているのは「プログラミングは初めて」ということでした。教える方も気合が入りますね。

はじめに、プログラミングをマスターしたときのイメージを持ってもらうためにProcessingでどんなことができるのかをいくつかの作品例を紹介しながら説明がありました。ここに紹介するのは静止画ですが、この中の幾つかは実際は刻々と不思議な動きを見せる動画です。 

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画面に食い入るように見入る塾生一同。「自分もこんなことができるようになるんだ!」と考えて、(そこまで至るのにどんなに大変かはあまり考えずに?(笑))ワクワクしたようです。

 

さて、イメトレが完了したら、早速ソフトを起動。Processingの画面構成や基本操作を学んだ後、いよいよ実際にコードを書いてみます。…と言っても、いきなり先ほどの事例のような複雑なグラフィックを描くコードを書くのは無理なので、最初は直線や四角形、円などの簡単な図形をスクリーンに出力するコードをトレースするところからスタートします。初歩の初歩とは言え、自分にとっては人生初めてのコーディングに、PCを使い慣れているはずの塾生たちも何だかおっかなびっくり(笑)タイピングしていました。

 

Processingでは、例えば線を1本を引く場合こんなふうにコードを書きます。 

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  IllustratorPowerPointなら直線ツールをクリックして端点をちょいちょいと指定するだけで描けますが、Processingではこのように「Processing語」でコンピューターに指示をしなければいけません。「何でそんな回りくどいことを?」と思うかもしれませんが、IllustratorPowerPointのようなアプリケーションソフトの“中身”には、これと同じように直線を描く命令が「コンピューターの言葉」で書かれているんです。「プログラミング(の習得)」とはこの「コンピューターの言葉」を理解することにより、コンピューターの能力をより自由に、強力に引き出すことなんですね。辻講師が講義の中で繰り返し「プログラミングと外国語の学習はほとんど一緒」と口にするのですが、Illustratorのようなアプリケーションを「指差し会話帳」のようなもの、プログラミング言語を「外国語そのもの(を使いこなす能力)」と考えると、なんとなくその意味が分かるのではないでしょうか。

 

とはいえ、誰もが初めて触れるコンピューター言語という「外国語」。初めて訪れた外国で挨拶一つするにも首をひねるのと同じように、線1本引くだけでもはじめは皆頭を抱えていました…が、丁寧に説明されるとProcessingという言語の単語や文法のイロハの「イ」がぼんやりと見えてきたようです。

このように「一人ひとりが分かるまで根気強く教える」というのが、前田紀貞建築塾のアルゴリズム建築コースのモットーです。ちなみに対面での授業は毎週土曜日の週1回ですが、それ以外の日でもmixiコミュニティを通じて24時間いつでも質問を受け付けています。このmixiでの質問には講師が一つ一つ丁寧に答え、指導していきますので、授業中にどうしても理解しきれなかったり、自分で復習してみたらどうも上手くいかない…という場合でも安心です。

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アルゴリズム建築コース」の初回講義の様子、伝わったでしょうか?次回はもう少し「アルゴリズム的思考の練習」や「プログラミングエラーあるある」に踏み込んで熱血講義の様子をお伝えしていきますので、お楽しみに!

 

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このブログをご覧になってアルゴリズム建築コースに興味が湧いた方はもちろん、「アルゴリズミックなコンピューテーショナル建築デザインに興味がある」「アルゴリズム建築ってよく聞くけど、学校ではそんな授業がない…」「将来のキャリアアップを考えてアルゴリズム建築を習得したい」「アルゴリズム建築ってぐにゃぐにゃの形遊びに感じるけど、そうじゃない本当のアルゴリズム建築を学びたい」という方は、ぜひ前田紀貞建築塾のウェブサイトをチェックしてみて下さい。学生・社会人・建築経験などは問いません。未来の建築の創造を本気で目指す方の参加をお待ちしています!

前田紀貞建築塾【アルゴリズム建築コース】

http://www5a.biglobe.ne.jp/~norisada/SCHOOL/course/index.html - 4

また、前田紀貞建築塾では原則として毎月最終日曜日に無料の入塾説明会を開催しています。次期(11期)開講は8月予定ですので少し先ですが、ご興味ある方は是非ご参加ください。また、実際の授業の様子を見たい!という方は、毎週土曜に行われる授業の見学も可能です(詳しくは前田紀貞建築塾のウェブサイト(http://p.tl/YhSL)をご確認の上、見学希望の旨ご連絡下さい)。

 

 

前田紀貞アトリエ 殿村勇貴